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「第4回津谷裕貴・消費者法学術実践賞」

の受賞者決定について

 
令和元年12月23日更新


 第4回津谷裕貴・消費者法学術実践賞につきまして、選考委員会における厳正な審査の結果、受賞者を次のとおり決定いたしました。授賞式および報告会の開催要領は→コチラ

 

■学術賞(1名)

〔受賞者〕菅 富美枝(法政大学教授)
〔対象〕『新 消費者法研究―脆弱な消費者を包摂する法制度と執行体制』(2018年、成文堂)
〔理由〕これまでわが国では脆弱性を法主体の属性として捉え、属性に応じたパターナリスティックな保護法制が展開されてきた。
 本書は、制限行為能力制度を持たないイギリス法の高齢者や障害者の消費者保護法制とその執行の現状の分析、検討を通じ、EU消費者法が注目する「状況濫用的脆弱性」の議論と対比させながら、あらゆる消費者が潜在的に有する「状況脆弱性」に着目し、手続保障の観点からの助言的支援の必要性とその理論的位置づけを論じる。
 そして、消費者の主体的能力の不十分さを根拠として意思表示の効力によって消費者の権利を保障するのではなく、取引の相手方が消費者の情報力、交渉力及び判断力の不十分さにつけ込んで契約締結を強行することに、契約の拘束力を否定する根拠を見いだしうるとする。
 このような議論は、高齢者・若年者保護のあり方のみならず、今後の消費者契約法の改正の議論においても、意義のある新たな視点を提供するものである。

 

 

■実践賞(1団体)

〔受賞者〕消費者被害事例ラボ
〔理由〕消費者被害事例ラボ(略称「消ラボ」)は、適格消費者団体「消費者市民ネットとうほく」が呼びかけ、青森、岩手、山形、宮城、福島など東北各地の大学に勤務する若手研究者と各地の弁護士、相談員、行政関係者らで構成されている任意団体であり、2015年4月の発足以降、年に5〜6回、20〜30名が仙台に集まり、学習会を開催している。
 テーマの選定段階から相談員、弁護士、研究者がともに関わり、それぞれが日ごろ関心を持つ事案を取り扱う方針をとることで継続的な活動につなげている。共通項がありつつも未だ地域色の残る東北各県で、遠距離に位置する大学の研究者と実務家らが定期的に集まり互いに研鑽を図ることで、各地の実情をも踏まえた問題検討が可能となり、その活動の価値を大きく高めている。
 さらに、「消ラボ」は、そこで得た成果を団体内にとどめるのではなく、『先端消費者法問題研究』(2018年、民事法研究会)として出版し、全国に発信している。